(2025年05月02日更新)
女性性器切除(FGM)は、アフリカを中心に約2000年前から続く危険な慣習で、今なお世界30カ国以上で少なくとも2億3000万人の女性・女の子たちが経験しているとされています。
国際NGOプラン・インターナショナルは、この深刻な人権侵害の根絶を目指し、各国で啓発活動や支援を行っています。

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「女性性器切除」(Female genital mutilation、以下FGM)とは?
今も多くの国や地域で行われているFGM
FGMは、アフリカ・中東・アジアの一部の国々で行われており、世界30カ国で少なくとも2億3000万人の女の子と女性が経験しているといわれます。※1。またFGMを受ける女の子が、 2030年までに約7000万人増えると試算されています。※2
参考:15~49歳の女の子、女性がFGMを施されている割合(アフリカ) ※3
- 80%以上
- ソマリア、ギニア、マリ、エジプト、スーダン、シエラレオネなど
- 50%~80%
- エチオピア、ブルキナファソ、ギニアビサウなど
- ※1.UNICEF(2024 update)Female Genital Mutilation: A global concern
- ※2.Millions more cases of violence, child marriage, female genital mutilation, unintended pregnancy expected due to the COVID-19 pandemic | UNFPA – United Nations Population Fund
- ※3.UNICEF(2024 update)Female Genital Mutilation: A global concern
国・地域によって異なる背景
ひとえにFGMといっても、国や地域によってさまざまな背景があり、施術についても一律に語れるものではありません。また、公に語られることが少ないため現状把握が難しく、密やかに文化・伝統として続けられています。
FGMを受ける理由
FGMで苦しむ女の子たちがいなくなることを目指して
毎月の寄付で女の子を守る すでに選択しています。 画面下側の「あなたにできること」ボタンより手続きにお進みください。
地域によって理由はさまざまですが、大人の女性になるための通過儀礼・結婚の条件と捉えられることが多いようです。女性の地位が低い場合は経済力がないことも多く、生きていくためには結婚しなくてはなりません。たとえ健康上のデメリットを知っていても、生きるための選択としてFGMを受け入れがちです。

法律で禁止されても続く事情
FGMは現在、アフリカの20カ国以上で法律によって禁止されており、罰則を含む刑法の改正が行われる国も増えています。つまりFGMは違法であるにもかかわらず、下記などの理由から今も水面下で続けられているのが現状です。
法律よりも地域の慣習が優先される
根深い迷信と誤解により、必要なことだと考えている人が多くいます。地域全体の意識を変えるのは容易ではありません。
法の執行が不十分で隠れて施術が行われる
施術が行われたことが分かっても、通報ルートがありません。また取り締まりが行われていないのも問題のひとつです。
法律で禁止されていること自体を知らない場合も
法律が変わっても、その情報が十分に人々にいきわたらず、知らされないまま続けている場合もあります。
生涯にわたり深刻な健康被害をもたらすFGM
FGMは、女の子や女性の心と体をあらゆる面から傷つけ、長期にわたって苦しめます。 施術に対する医学的正当性や健康上の利点はまったくなく、医療専門家が清潔な施設で行えばよいというものではありません。
幼いうちに施術を受けた場合、本人が覚えておらず、思春期になって激しい生理痛や後遺症に疑問を持ってから親に知らされる例もあります。施術は不衛生な環境・麻酔なしで行われることもあり、想像を絶する激痛に苦しむうえ、時に命を落とす危険もあります。
FGMのリスクや後遺症の例
- 激しい痛み・大量出血(死に至る場合も)
- 感染症・排尿障害・慢性的な合併症
- 生理不順・生理や性行為の際の激痛・難産
- うつやPTSDなどの精神的疾患

意味もなく、生涯にわたり健康面で害を及ぼすFGMは、
女の子や女性の「権利の侵害」に他なりません。
FGM根絶を目指すプランの活動
長年にわたって受け継がれてきた慣習を変えるには、地域全体の規範が変わる必要があります。まずは見えない場所で行われてきたFGMについて、公の場で話すことが第一歩です。プランは、さまざまな立場の人に合わせたアプローチを行なっています。
巡回診療を通して多くの命を救う
多くの国がFGMを禁じるなか、ソマリアは合法を維持する数少ない国で、15~49歳女性の99%が施術されています。巡回診療で各地域を訪問し、FGM合併症の治療と危険性を伝える啓発を行いました。2024年上半期だけで患者80人以上を適切な病院に移送し、命を救えました。また、治療を受けた女性の多くが、子どもや次世代の女性に同じ苦痛を経験させないと決意しています。こうした反対の声は地域住民の意識と行動を変える大きな力となっています。

体験者が語る女性性器切除(FGM)(ノルウェー)/プラン・インターナショナル・ジャパン (3分30秒)
女の子たちが自由になるために
エチオピアで暮らす3人の娘を持つ女性は、「FGMの慣習を守ることでこそ、尊厳が守られ良い結婚ができる」と信じて、娘たちにFGMを受けさせました。幸せを願っての選択でしたが、プランの活動に参加して初めてリスクを知り、深く後悔したといいます。
「地域全体からFGMを受けるべきという考えがなくなり、女の子自身がFGMを受けないと考え・行動し、また保護者が娘に受けさせないと考える」、この3つが揃ってはじめて、女の子たちがFGMから解放される未来が実現します。
そのためには、「家庭や地域において、女の子たちが身体のこと、将来のことを自分自身で決めることができない」という現状を変えていく必要があります。地域全体でジェンダー平等を促進し、男の子同様、女の子たちに学ぶチャンスを与えるなど、社会的地位を変化させていく働きかけも大切です。

人々の意識が変わり、FGMで苦しむ女の子たちがいなくなる日が来ることを目指して、
プランはこれからも活動を続けていきます。

国際NGOプラン・インターナショナルについて
国際NGOプラン・インターナショナルは、誰もが平等で公正な世界を実現するために、子どもや若者、さまざまなステークホルダーとともに活動しています。子どもや女の子たちが直面している不平等を生む原因を明らかにし、その解決にむけ取り組んでいます。子どもたちが生まれてから大人になるまで寄り添い、自らの力で困難や逆境を乗り越えることができるよう支援します。